ジョンナッシュと統合失調症

ジョンナッシュは映画「ビューティフル・マインド」にて統合失調症との闘病を含めた彼の生い立ちについて記されている。統合失調症とは思考、知覚、感情、言語、自己の感覚、及び行動における他者との歪みによって特徴づけられる症状をもつ精神障害で、約100人に1人が患うとされる。陽性症状、陰性症状、認知機能障害にわけられ、陽性症状では妄想、幻覚、思考障害、陰性症状では感情の鈍麻、思考の貧困化、意欲の欠如、自閉、認知機能障害では記憶力の低下、注意・集中力の低下、判断力の低下がある。統合失調症の原因はあまりよくわかっていないが大きなストレスが要因ではないかと言われている。また、思春期から40歳までに発病しやすいと言われている。ジョン・ナッシュ統合失調症の症状は、はじめは不安や恐怖の影響を受けて他人から常に批判を受けているという妄想が主症状だったそうです。彼の症状は大学院時代から悩まされ、周りからは奇異な目で見られていた。また、政府組織から敵国であるロシアの通信暗号解読を強要されるという妄想にかられ、日常と非日常の世界の区別がつかなくなっていく。その後、精神病院へ入院し妄想型統合失調症と診断され、その後、統合失調症の治療で抗精神病薬インスリン・ショック療法を受けている。統合失調症と診断されたナッシュは、拒絶と再発を繰り返すこと10年に及ぶ。アリシア夫人の献身的な支えによって幻覚・妄想の世界を無視し非現実的な世界から脱却し社会生活を営めるようになった。ナッシュというと経済学でよく知られるゲーム理論である「ナッシュ均衡」が有名である。1994年にゲーム理論の功績が認められノーベル経済学賞を受賞している。また、2015年にはリーマン多様体の埋め込み問題に関する功績によりアーベル賞を受賞している。名誉ある賞を受賞し天才と称され一見華やかに見える人生だが、背景に精神疾患である統合失調症を長らく患っていた。症状は完治するまで約30年続いたと言われている。この「ビューティフル・マインド」は統合失調症を抱えているにも関わらず、成功するという一見スティグマを解消し、統合失調症に関してネガティブな印象を与えないというよくできた作品であると私は思う。「ビューティフル・マインド」はやや非現実的な印象もあるが、統合失調症を含めた精神疾患はみな多様であり、肯定的な印象を受けた。統合失調症では今では薬も開発され約50%の人は社会復帰にまで至っている。現在では精神疾患スティグマはひどく差別や批判、奇怪な存在で混乱や危険を伴う印象としてとらえられるが、この映画はそんな精神疾患に一石を投じるであろう作品であると考える。